文化の日に

絵本の会のお母さんと話す。絵本の会のみんなはたいていが古いものへの愛着を持っている。だから、もう自分の子どもが絵本からはなれたおとなになっても、あちこちで子どもたちに向かって絵本を読み続けている。
あるお母さんがこういった。

わたしは、自分が読んでもらった絵本もまだ持っているの。
それから、娘に読んでやった本は、捨てないでとってあるの。
だから、多分娘も、ひきついでくれるの。捨てないと思う。

戦後の東京、焼け野原にほとんど残っていなかった本。そこから復興する中で子どもたちによい本を与えたいと願った編集者と親と先生と。そして今よりずっと貴重な本を子どもに買い与え、読んでやったお母さんたち、お父さんたち。
子どもは成長してまた同じ本を子どもに読んでいて。
もうじきその次の世代も同じ本を読んでもらうのだろう。

お母さんやおばあちゃんや非違おばあちゃんが赤ちゃんを囲む、同じ本を手にして。

こういうことが文化なのかな、と思う日。

私は幼い頃裏の大きな家によく遊びに行ってそこの本棚の殆どの本を読ませてもらった。
幼稚園になると近くに図書館ができてそこの本を読めるだけ読んだ。中学になると図書室の本を全部棚の左から順に読んだ。
家を壊したりして、わずかに手元に持っていた本はもう無いけれど、幼い頃に読んだ絵本の記憶は、子どもと読むに連れてまた思い出されるものだ。

絶版になってもう読むことの出来ない本を無性に探したくなる今日この頃。